2024年法改正で変わる!不動産投資関連 押さえておきたい法改正4つ
1 所得税減税 4万円の定額減税 ※不動産所得は確定申告時に減税
急激な物価上昇による家計負担を軽減するため、政府は2024年6月から納税者本人と扶養家族を対象に、所得税3万円・住民税1万円の計4万円を定額減税する方針を決定しました。
所得税は2024年1月分から1年間、住民税は2023年分の所得が対象になります。
またこの減税方式は住民税・所得税を納めている課税世帯のみに当てはまるため、非課税世帯や低所得者は当てはまりません。
不動産所得は確定申告時に減税されますので、2025年3月に申告する際は、減税されているかしっかり確認しましょう。
2 相続登記 義務化
2024年4月1日から相続登記の義務化が開始されました。
平成28年度の国土交通省の地籍調査によると、日本全土の土地のうち、20%ほどの土地が不動産登記簿上で所有者がわからないという調査結果が出ています。
所有者不明土地の解消のため、相続登記が義務化されることになりました。
不動産を相続したことを知ったときから3年以内に相続登記を申請しなければならず、正当な理由なく期限内に登記をしなかった場合には10万円以下の過料が科せられます。
また、過去に相続した相続登記未了の不動産も登記義務化の対象となります。
この場合には、施行日または不動産を相続したことを知ったときのいずれか遅い日から3年以内に申請する義務を負います。
相続登記を放置すると、過料以外にも、数次相続(遺産分割を行わないうちに相続人の一人が死亡してしまい、次の相続が発生してしまうこと)が発生するなどのデメリットがあるため、対象者は注意が必要です。
3 生前贈与加算期間(持ち戻し)が3年から7年へ
生前に贈与された財産についても、相続税の課税対象となるようにするための制度で、適用対象はこれまでは「亡くなる前3年以内に贈与された財産」でしたが、「7年以内」に延長されました。
ただし、単に対象期間が延ばされたわけではなく、経過措置期間が設けられています。相続開始前の3年以内の贈与が加算対象となるのは従来どおりですが、4年以上前のものは、その期間の生前贈与の額から100万円を控除した額が持ち戻しの対象となります。
たとえば、年間100万円の生前贈与を続けていた場合、3年以内の300万円はそのまま持ち戻しの対象となりますが、4年前から7年以内の400万円は100万円を控除した300万円が持ち戻しの対象となります。
一方、暦年課税のような基礎控除がなかった相続時精算課税制度に年間110万円の基礎控除が設けられ、制度利用のハードルが緩和されました。
どのように次の世代に資産をわたしていくか、家族で贈与について話し合い、制度を上手に活用することが得策です。
4 「タワマン節税」の改正
相続税評価額と市場価格の大きな乖離を埋めるために、タワーマンション節税のルールが改正となります。2024年1月1日以降に取得した区分所有形態のマンション評価額の計算ルールが変更となります。
国税庁の資料によると平成30年における市場価格と相続税評価額との乖離率の平均値は戸建住宅が1.66倍であるのに対し、タワーマンションは2.34倍です。
言い換えると戸建住宅の相続評価額は約60%であるのに対し、マンションの場合は約42.7%ということになります。またマンションの階層に比例して、比率も大きくなっていることも指摘されています。
今回の改正で不動産の相続評価に「評価乖離率」と「評価水準」という新たな指標が加えられました。
これによりマンションの市場価格と相続税評価額の乖離率が1.67倍以上ある場合、相続税評価額が市場価格の60%になるように補正されるようになりました。 改正により、単に高層階のマンションを取得するだけで、相続税負担を大幅に軽減するという効果は見込めなくなりました。
しかし、マンションをはじめとした不動産は、現金や有価証券よりも相続税評価額は割安に算出されるというメリットはなくならず、不動産が相続に強いことに変わりありません。
まとめ
今回の税制改正大綱では、定額減税で幅広く減税をする一方で、富裕層を対象にした相続関連が改正され、相続対策がより複雑になりました。
しかし、個別の資産額や家族構成、それぞれの事情によっては、従来の制度より改正後の制度が有利になるケースも考えられます。
税金は知らないと損をすることも多く、誰も教えてくれません。 毎年のことですが、税制改正を把握しつつ、利用できるものはきっちり利用しましょう。